課題と効果
課題
- 名刺管理システム・SFA(営業支援システム)・自社商品情報など複数ツールを、案件ごとに手作業で横断して情報収集
- 1件あたり約30分の準備工数が、営業活動のたびに発生していた
- 営業部内に、この非効率を解消するための業務改善を主導できる人員的な余裕がなかった
効果
- Copilot StudioによるAIエージェント構築により、1件あたり30分かかっていた営業準備工数を実質ゼロ化
- 営業準備の内容が標準化され、担当者ごとのバラつきが解消。現場からは高評価のコメントが多数寄せられた
導入前
複数ツールを横断し、1件30分かけて手作業で準備
クライアントの営業部では、名刺管理ツール、SFA(営業支援システム)、自社商品情報など複数のツール・資料を、担当者が案件ごとに個別に検索・整理して営業準備を行っていた。1件の営業活動あたり約30分の工数がかかっており、営業部内にこの非効率を解消するための業務改善を主導できる人員的な余裕がなく、根本的な解消には至らずにいた。

図:属人化した営業準備が抱える3つの課題
再設計
Microsoft 365との親和性を活かし、Copilot StudioでAIエージェントを構築
解決アプローチとして採用したのは、Copilot Studioを用いたAIエージェントの構築だった。クライアントはすでにMicrosoft 365を全社的に利用しており、他の生成AIツールでは都度大量の資料を読み込ませる必要があるのに対し、Copilot Studioは既存環境との親和性が高く、スムーズな導入が見込めた。

図:営業準備における情報収集フローの変化
ノーコードでの開発と、統合したデータソース
Copilot StudioはPower Automateに近いノーコード開発環境であり、あらかじめ用意された処理パーツ(トピックやアクション)をフロー状につなぎ合わせ、各パーツのプロパティに指示文や参照先を設定していく形で開発する。
情報ソースとしては、名刺管理ツール、SFA、そして自社商品情報が格納されたSharePointの3つを、Copilot Studioの検索対象として接続。案件ごとにこれらを個別に検索していた従来の作業を、AIエージェントへの問いかけ一つで完結できる形に統合した。
抽象的な要件を、丁寧なヒアリングで具体化
当初の要件は「AIを使って、次回の顧客提案に使える情報を出してほしい」という程度の抽象的なものだった。そこでまずヒアリングを重ね、現場の実態を丁寧に調査した。すると、当初「顧客情報が格納されている」と説明されていたSharePoint上のフォルダには、実際には顧客情報ではなく自社の商品情報や、AIエージェントの回答精度を下げるノイズとなる情報が混在していることが判明。データの格納方式そのものを見直す改善提案を行い、整理を実行した。
全体の進行としては、最初の1か月半を要望受付・要件整理・課題解決に充て、残り半月で実装する機能を選定し、開発・納品まで進めるというスケジュールで推進。要件整理にあてた1か月半が終わるタイミングで、ミニマム機能でのPoCを提出した。並行して見つかった環境面の課題(情報システム部門側のライセンス設定など)は、営業担当者にも伝わるよう図解しながら説明し、情報システム部門へ取りまとめて報告・調整するという役割も担った。
乗り越えた壁:ふんわりとした要件と、タイトな開発体制
苦労した点として、まず当初の要件が非常に抽象的だったことが挙げられる。実際にどのような情報が現場に存在するのかを掴むためのヒアリングには相応の時間を要した。加えて、想定していたデータの中身が実態とは大きく異なっていたため、AIエージェントの開発そのものよりも先に、データ整理という下準備が必要になった。
クライアント社内にはPower Platformの運用ガイドラインが元々存在しておらず、情報システム部門以外がアプリを構築する文化もなかったため、環境面の調整には想定以上の時間を要した。この調整には、Power Platformの運用ガイドライン策定に関わってきた経験が活きている。
また、事前にライセンスや権限設定について顧客側に確認・依頼しておくべきだった点など、進行の中で見えてきた事前準備の余地もあり、次のプロジェクトに向けた学びとなっている。
導入後
営業準備の工数を実質ゼロ化、現場から高評価の声
本プロジェクトの成果として、1件あたり約30分かかっていた営業活動の準備工数は、実質的にゼロに近い水準まで削減された。あわせて、担当者ごとにバラつきのあった営業準備の内容が標準化され、対応品質の底上げにもつながっている。
複数ツールを横断した営業準備に工数がかかっている、あるいは担当者ごとの対応品質にバラつきがある――同様の課題を抱えている企業にとって、参考になる事例ではないでしょうか。