課題と効果

課題

  1. 問い合わせ対応にかかる工数が多く、担当者の負荷が高い状態が続いていた
  2. FAQ作成も手作業のため、継続的なナレッジ蓄積が難しい構造になっていた
  3. この2つが重なり、業務効率・ナレッジ活用度のいずれもなかなか高まらなかった

効果

  1. ヘルプデスク業務にかかる時間を月間68.2時間から13.6時間へ削減(約80%の工数削減)
  2. ChatGPTベースのRAG構成により、ナレッジ活用の精度とスピードが向上

導入前

問い合わせ対応とFAQ作成、両方が手作業で負荷に

社内ヘルプデスクでは、問い合わせ対応にかかる時間と工数が大きく、担当者の業務負荷が高い状態が続いていた。加えて、寄せられた問い合わせ内容をもとに新規FAQを作成する作業も手動で行っており、継続的なナレッジ蓄積が難しい構造になっていた。

この2つの課題が重なり、業務の効率性とナレッジの活用度がなかなか高まらない状況が続いていた。問い合わせが来るたびに一から対応し、その内容がFAQという資産として蓄積されないまま、同じような対応が繰り返されるという悪循環に陥っていた。

問い合わせの内容も、パスワードの再発行や社内システムの操作方法、備品申請の手続きなど多岐にわたり、担当者はそのつど過去の対応履歴を思い出しながら回答を作成する必要があった。既存のFAQもExcelファイルや社内Wiki、過去のメールなど複数の場所に散在しており、担当者自身がどこに何が書かれているかを把握しきれていないという二次的な問題も抱えていた。

図:ヘルプデスク業務が抱える課題の連鎖

再設計

ChatGPTベースのRAGとPower Platformで、検索とFAQ作成を自動化

本プロジェクトでは、ヘルプデスク業務の効率化を目的に、2つの機能を自動化するソリューションを構築した。1つは問い合わせ文面をもとに、ナレッジベースから該当するFAQを自動検索する機能。もう1つは、問い合わせ内容から新規FAQを自動生成する機能である。

両機能とも、ChatGPTをベースにRAG(Retrieval-Augmented Generation)を構築する手法を採用し、Microsoft Power Platformを活用して既存の業務フローとの連携を図った。

① FAQ自動検索の仕組み

問い合わせ文面が入力されると、RAGの仕組みによってナレッジベース内の関連FAQをベクトル検索で抽出し、ChatGPTがその内容をもとに回答文を生成する。検索結果をそのまま提示するのではなく、問い合わせの文脈に合わせて回答を要約・整形して提示することで、担当者が該当箇所を探す手間そのものを省いている。

② 新規FAQ自動生成の仕組み

既存のFAQでカバーできていない問い合わせがあった場合は、その内容をもとにChatGPTが新規FAQの下書きを自動生成する。生成された下書きは担当者が内容を確認したうえでナレッジベースに登録する運用とすることで、AIによる誤情報の混入を防ぎながら、ナレッジ蓄積のスピードを大幅に高めている。

MVPからの段階的なブラッシュアップ

開発にあたってはスピードを重視し、まずMVP(Minimum Viable Product)を構築。成果物イメージをクライアントに確認いただきながら、UI/UXを段階的にブラッシュアップしていくアプローチを採用している。初期のMVPでは検索精度や回答の言い回しに改善の余地があったが、実際の問い合わせデータをもとにナレッジベースの構成やプロンプトを調整することで、実務に耐えるレベルまで品質を引き上げていった。

図:ChatGPTベースRAGによる自動化の全体像

導入後

月68.2時間から13.6時間へ、約80%の工数削減

導入後、ヘルプデスク業務にかかる時間は月間68.2時間から13.6時間へと大幅に削減された。問い合わせ対応とFAQ作成の両方を自動化したことで、担当者の業務負荷は大きく軽減されている。

あわせて、ChatGPTベースのRAG構成により、ナレッジ活用そのものの精度とスピードも向上した。単なる工数削減にとどまらず、蓄積されたナレッジが実際に活きる状態へと変化している点が、本プロジェクトの成果と言える。

現場の担当者からは、単純な問い合わせ対応に追われる時間が減ったことで、より複雑な相談や改善提案など、本来注力すべき業務に時間を割けるようになったという声も上がっている。

今回はヘルプデスク業務を対象としたが、同様の「問い合わせ対応」と「ナレッジ蓄積」という構造的な課題は、総務や人事など他の管理部門にも共通して見られる。今後は、他部門への横展開や、対応可能な問い合わせ範囲の拡大を通じて、全社的なナレッジ活用基盤としての発展を目指していく。