課題と効果

課題

  1. 他ベンダー製の登録用Webシステムに操作性の課題があり、事務担当者による手作業入力が常態化
  2. 既存Excelフォーマットは288パターンの業務分岐のうちわずか32パターンしか対応できず、大半は最大62項目の手入力が必要
  3. 入力不備やコピー&ペーストミスが頻発し、修正対応にも多くの工数が割かれていた

効果

  1. VBAマクロにより288パターンの業務分岐すべてに対応(旧フォーマットは32パターンのみ対応)
  2. 顧客部署における業務量の29%を占める加盟店・端末処理業務を効率化

導入前

288パターンのうち32パターンしか対応できなかった入力フォーマット

クレジットカード事業を営むクライアントでは、法人事務グループが加盟店・端末の新規契約や契約内容の変更・解約に伴うシステムへの情報登録業務を担っていた。この業務では、他ベンダーが開発した登録用Webシステムの操作性に課題があり、結果として事務担当者が手作業で登録を行っているのが実情だった。

手作業の際に使用していたExcelフォーマットも同様に他ベンダーが開発したものだったが、利便性に乏しく、加盟店Web向け・端末Web向けという提出先の違いなどによって生じる288パターンの入力分岐のうち、対応できていたのはわずか32パターンのみ。残りの大半は、最大62項目にのぼる情報を手入力する必要があり、入力不備やコピー&ペーストに起因する人為的ミスが頻発していた。さらに、これらのミスへの修正対応にも多くの工数が割かれる状態が続いていた。

繁忙期には申請件数が集中し、事務担当者は該当パターンを都度目視で判断しながら、Excelシート上で必要な項目を手探りで埋めていく状態が続いていた。ミスが発生した場合は差し戻しや再提出のやり取りが発生し、加盟店側・端末側それぞれの担当者間での確認工数も積み重なっていた。

再設計

VBAマクロで全パターンに対応、RPAで入力補助も自動化

本プロジェクトでは、VBA(Excel)を用いて288パターンすべての業務分岐に対応したマクロファイルを新たに開発。統一フォーマットから加盟店Web・端末Web向けのフォーマットへの自動出力に加え、入力情報のチェック・補正機能も実装した。あわせて、WinActorを用いたRPAを開発し、既存システムからコーディング項目(顧客情報)を自動取得してExcelへ転記する仕組みも構築している。

統一フォーマットとチェック・補正機能

開発にあたっては、まず加盟店Web・端末Webという2つの提出先フォーマットの違いを吸収する「統一入力フォーマット」を設計した。担当者はこの統一フォーマット上で必要事項を入力するだけでよく、あとはVBAマクロが288パターンの分岐ロジックに従って、提出先ごとの正しいフォーマットへ自動的に変換・出力する。あわせて、入力値の整合性を自動チェックし、不備があればその場で補正候補を提示する機能も実装。従来は提出後に発覚していた入力ミスを、入力段階で防げる仕組みとした。

RPAによるコーディング項目の自動取得

加盟店・端末の登録には、既存システムに保持されているコーディング項目(顧客情報)の転記も必要になる。この転記作業についても、WinActorを用いたRPAを別途開発し、既存システムから該当情報を自動取得してExcelへ転記する仕組みを構築した。これにより、担当者が複数のシステム画面を行き来しながら情報を拾い集める作業そのものをなくしている。

プロトタイピングによる段階的なブラッシュアップ       

入力インタフェースの改修にあたっては、プロトタイピング的な進め方を採用した。まずプロトタイプを開発し、それをもとにクライアントと打ち合わせを重ねながら詳細なインタフェース仕様を固めていくという、段階的にブラッシュアップしていくアプローチを取っている。実際の入力担当者が日常的に扱う画面であるだけに、細部の使い勝手が業務効率を大きく左右する。そのため、机上の要件定義だけで仕様を固めるのではなく、触って確かめながら改善点を洗い出すプロセスを重視した。

導入後

32パターン対応から288パターン全対応へ

本プロジェクトの成果として、従来は288パターンのうち32パターンにしか対応できていなかった業務分岐に対し、新たに開発したマクロによってすべてのパターンに対応できる状態を実現した。

この加盟店・端末処理業務は、顧客部署である法人事務グループの業務量全体の29%を占める、最も比重の大きい業務であり、その大部分を効率化できたことは、部署全体の生産性向上に直結する成果となっている。

業務量の削減は、単に処理時間が短くなったというだけでなく、担当者が本来注力すべき確認業務や、加盟店・端末先とのコミュニケーションに時間を充てられるようになったという副次的な効果にもつながっている。

今回の統一フォーマット化とRPAによる自動転記の仕組みは、加盟店・端末登録業務に限らず、同様に複雑な入力分岐を抱える他の申請業務にも応用できる可能性がある。

納期ぎりぎりまでエンドユーザの要望を余すところなくくみ取っていただき、ありがとう。このように期限直前まで柔軟に対応いただけるのは、プロトタイピング的な進め方によるものと感じている

ーークライアント ご担当者

既存システムの入力分岐が複雑で対応しきれていない、あるいは手作業によるミスと修正工数に悩まされている――同様の課題を抱えている企業にとって、参考になる事例ではないでしょうか。