課題と効果
課題
- 購買から請求までのプロセスがブラックボックス化しており、実態を把握できていなかった
- 標準プロセスから逸脱した例外処理や承認滞留が随所で発生
- 組織規模が大きく、現場のヒアリングだけでは根本原因(ボトルネック)を特定できない
効果
- 分析対象とした購買発注業務(年間18,000時間)のうち30%にあたる、年間5,400時間の工数を削減
- 業務プロセスの滞留解消により、年間約1,620万円のコスト削減効果を実現
導入前
「どこで」「なぜ」遅延が起きているのか、把握できない規模の業務
クライアントの購買部門では、購買部門の担当者が申請・承認・見積取得・発注・納品確認・請求書処理・支払に至る一連の業務フローを担っていたが、担当者ごとに対応の仕方に差があり、全体の工数が膨らんでいた。このプロセス全体が管理部門にとってブラックボックス化しており、標準プロセスから逸脱した例外処理や、承認待ちによる滞留が随所で発生していることまでは把握していたものの、その実態を可視化する手段がなかった。
しかし、購買業務に関わる部署・担当者の数が多い大規模な組織であるため、現場の感覚やヒアリングだけでは、どの工程で、なぜ遅延が起きているのかという根本原因(ボトルネック)を特定できないことが最大の課題だった。原因が特定できないまま、対応は個々の担当者の裁量に委ねられる属人的な状態が続いていた。

図:購買業務が抱える3つの課題
再設計
イベントログを分析し、遅延・手戻りの発生ポイントを特定
対応にあたっては、プロセスマイニングを導入した。プロセスマイニングとは、基幹システムや業務システムに蓄積されたイベントログをもとに、実際の業務プロセスを可視化し、ボトルネックや手戻り、例外処理、標準プロセスからの逸脱を分析する業務改善の手法である。システムに残るタイムスタンプ付きの操作ログから「誰が」「いつ」「どの処理を」行ったかを再構成し、本来あるべき標準プロセスと実際の流れとの差分を可視化することで、ヒアリングだけでは見えにくい構造的な課題を客観的に洗い出していく。
本プロジェクトでも、購買部門の担当者が扱う購買申請・見積・発注・請求までのワークフロー全体を分析し、次のような課題を客観的なデータから特定した。
・承認待ちによる処理滞留
・見積取得・発注処理の遅延
・納品確認・請求処理での手戻り
・標準フローから外れた例外処理
・特定部署・担当者への処理集中

図:購買発注フローとボトルネックの発生ポイント
こうして課題を工程単位で可視化できたことにより、どの工程に手を打つべきかの優先順位が明確になった。特定された課題に対しては、承認ルールの見直し、業務フローの標準化、システム連携、自動化を実施することで、業務工数の削減を図った。
導入後
削減工数5,400時間、年間1,620万円のコスト削減効果
分析の起点となったのは、購買部門の担当者30名が年間2,000時間(1日8時間×250営業日)稼働するという前提に基づく、年間総業務時間60,000時間である。このうち、今回分析対象とした購買発注業務は、その30%にあたる18,000時間。イベントログを解析した結果、この18,000時間のうち承認滞留や例外処理などの非効率な作業・手戻りが30%相当を占めていることが判明し、これに該当する年間5,400時間分の削減を実現した。

図:削減効果の内訳
削減した5,400時間を時間単価3,000円で換算すると、年間の削減効果は約1,620万円となる。業務プロセスの滞留を解消したことによって、不要な運用コストを直接的に削減した形だ。
今回対象としたのは購買発注業務に限られるが、プロセスマイニングによって可視化した「承認滞留」「例外処理」「特定部署・担当者への処理集中」といった課題パターンは、経理・人事など他の管理部門の業務にも共通して見られるものと考えられる。同様の手法を他の業務プロセスへ横展開できれば、さらなる工数削減の余地を客観的なデータに基づいて特定できる可能性がある。
業務プロセスがブラックボックス化し、根本原因を客観的に特定できずにいる――同様の課題を抱えている企業にとって、参考になる事例ではないでしょうか。