課題と効果
課題
- 契約仕様書(契約内容を定めた申請書類)の提出は、全社員(要求者)が専門部署「契約室」へメール添付で送るという運用に全面的に依存していた
- メールでのやり取りだけでは対応状況を一元管理できず、契約室側は誰がどの申請をどこまで対応しているかを把握できないまま、増え続ける件数をさばいていた
- 要求者側も、提出した申請が今どこまで進んでいるかを確認する手段が一切なく、進捗はブラックボックス状態だった
効果
- 週約5時間かかっていたメール対応・ステータス報告の工数を、週約30分まで削減
- 要求者・契約室双方でメール送信の手間自体がなくなり、進捗もリアルタイムに可視化。契約室側の手作業によるステータス管理も不要になった。
導入前
誰が、どこまで対応しているか分からないメール運用
契約仕様書(契約内容を定めた申請書類)は稟議書に近い位置づけの書類で、上がってきた書類に不備がないかを確認するのが専門部署「契約室」の役割である。この申請書類を、全社員(要求者)が契約室へメールに添付する形で送付する運用が長く続いていた。しかし、契約の種類が多様化し、種類ごとに確認すべき項目や必要書類が異なる中で、日々届く申請件数も増えていった。その結果、誰がどのステータスまで対応を終えているのか、今誰が対応しているのかが全く見えない状態になっていった。
とりわけ深刻だったのは、進捗状況を契約室側しか把握できていなかった点である。書類を提出した要求者側からは、自分の申請が今どこまで進んでいるのかを確認する手段がなく、現場では従来のメールベース運用に対する強い違和感が募っていた。

図:メール運用が抱える3つの課題
再設計
Power Platformで「要求者アプリ」「契約室アプリ」を構築
本プロジェクトでは、全社員が使う「要求者アプリ」と、申請内容を確認する契約室が使う「契約室アプリ」という2つのアプリケーションをPower Platformで構築した。フロントエンドにはPower Apps、バックエンドにはPower Automate、データベースにはDataverseを採用している。
特徴的だったのは、メールサーバーがクラウド版ではなくオンプレミス版のExchangeサーバーだったという環境面の制約である。クラウドフローから直接オンプレミス環境のメールサーバーへ接続することが難しかったため、メール送信の部分に限ってはPower Automate Desktop(RPA)を組み合わせることで、オンプレミス特有のインフラ制約をクリアしている。

導入後
週5時間から週30分へ、対応工数を大幅圧縮
アプリ導入前は、メール対応や上司へのステータス報告だけで、1日あたり1時間、週にすると約5時間の工数がかかっていた。導入後は、メール送信やステータス確認がアプリのUI上に一元化され、自動で表示・送信される仕組みとなったことで、この工数はほぼゼロに近い水準まで圧縮された。最終確認などを含めても、現在は週あたり約30分で完結している。
ステータス確認だけでなく、メールの送信自体も完全に自動化されたため、要求者側・契約室側ともにメール送信の手間そのものがなくなっている。

定量的な効果に加え、現場からの評価も高い。要求者側からは「申請後のステータスが詳細に確認できるようになったので、すごく安心感がある」という声が寄せられている。契約室側でも、誰が何件のステータスをどこまで進めているかがデータベース上で見える化されたことで、従来メールベースで個別に行っていた業務整理が不要になり、大幅に負担が軽減されたと好評だ。
メールでのやり取りだけでは申請状況が追えない、という課題を抱えている組織にとって、参考になる事例ではないでしょうか。