課題と効果
課題
- 全米Fortune500企業の92%以上が生成AI導入済み、国内でも58%以上がFY24中の本格導入を検討する中、活用の遅れは経営課題になっていた
- 既存のAIツールは日常業務フローの外にあり、使い方や活用場面が示されておらず、機運が実際の活用に結びついていなかった
- SaaS型AIツールも比較したが、セキュリティ・コスト・社内ナレッジ統合の面で自社に合う選択肢がなかった
効果
- ChatGPTライクな操作性とTeams連携により、登録済みユーザー数が全社員の約8割に到達
- セキュリティ・コスト面の優位性により、持続可能な社内AI基盤としての評価を獲得
導入前
AI活用の「実績不足」が導入の遅れを招く
全米Fortune500企業の92%以上がすでに生成AIを業務に導入し、国内でも58%以上の企業がFY24中の本格導入を検討している。競争環境が急速に変化する中、自動車業界のクライアント企業にとっても、生成AI活用の遅れは経営課題としてのスピード対応を迫られる状況になっていた。
現場の反応自体は前向きだった。しかし、既存のAIツールは日常業務フローの外にあり、どう使えば業務に役立つのか、どんな場面で活用すればよいのかという具体的な使い方・活用場面が示されないまま導入だけが先行していた。結果として、「使ってみたい」という機運は社内にあっても、それが実際の活用には結びついていなかった。
社内でSaaS型のAIツールを比較検討する動きもあったが、セキュリティ要件、社内ナレッジとの統合のしやすさ、導入・維持コストの面で自社の実情に合う選択肢が見当たらず、全社的な基盤整備と利用促進はクライアントにとって急務となっていた。

図:「機運」はあるのに「基盤」がないギャップ
再設計
ChatGPTライクな操作性×Teams連携で、「使い方」ごと届ける基盤に
クライアントが軸に据えたのは、誰もが違和感なく使い始められる操作性だった。ChatGPTライクなチャット機能を中心に据えつつ、日常業務で使い慣れたMicrosoft Teamsとの連携を実装。新しいツールを別途覚える負担をなくし、既存の業務動線の中にAIを組み込むことで、「使い方が分からず活用されない」という課題に直接応えた。
あわせてAPIによる実行も可能な設計とし、チャットUIを介さずとも各部署の業務システムから直接AIを呼び出せる構成とした。単発のチャットボットにとどまらず、全社の業務システムに組み込める基盤として設計した点が、SaaS型ツールにはない拡張性を生んでいる。
既存のSaaS型AIツールと比較した際の差別化ポイントは3点。セキュリティ面では、Azure上に自社で構築することで外部ベンダーにデータが渡らない構成を実現。社内ナレッジとの統合では、自前構築だからこそ既存の社内文書・システムと直接連携させる設計の自由度を確保。導入・維持コストでは、全社員規模での利用を見据えた場合、SaaS型の1人あたりライセンス課金よりAzure上の従量課金構成の方がスケール時のコスト優位性を持つ、という点を訴求した。

図:社内向け生成AIプラットフォームの構成
技術スタックは、バックエンドにFastAPI、フロントエンドにReact、インフラにAzureを採用。開発を支える技術基盤を固める一方で、忘れてはならなかったのが「作って終わりにしない」という視点だ。社内でAI普及推進を担うチームと連携し、アプリのブランディングや社員向けのAI研修・教育にも並行して注力しながら、全社への展開を進めていった。
導入後
登録率8割へ――全社に根づいた生成AI活用
プラットフォームの開発と普及活動の結果、登録済みユーザー数は全社員数の約8割に到達した。ChatGPTライクな操作性とTeams連携によって、AIは日常業務フローの外にある特別なツールではなく、業務の中に自然に組み込まれる存在に変わった。特別な研修を受けなくても直感的に使える設計と、業務動線上での接点があったことが、それまで「使ってみたい」で止まっていた層の定着を後押しした形だ。

図:登録率の成果
あわせて、セキュリティやコスト面での優位性は、一過性のブームで終わらない持続可能な社内AI基盤としての評価にもつながっている。
生成AI活用の機運はあるが「使い方」が現場に届いていない、あるいはSaaS型AIツールでは自社のセキュリティ・コスト要件に合わない――同様の課題を抱えている企業にとって、参考になる事例ではないでしょうか。