UiPathは、医療や金融、保険、製造業界など多くの企業で導入されている業務プロセスを自動化できるツールです。プログラミングコードを入力せずに使えることから、さまざまな企業から注目されています。
本記事では、業務効率化のツールを探す企業にむけて、UiPathを導入するメリットについて解説します。
UiPathとは?
UiPathとは、2005年にルーマニアで創業したRPAソフトウェアベンダーであるUiPath社によって提供されている、世界的に有名なRPAツールです。2024年現在世界中で約10,800社以上に導入されており、日本国内においても金融機関や自治体などを中心に1,000社以上で導入されています。UiPathは40を超える拠点を持ち、年間経常収益(ARR)は15億800万ドルに達しています。また、顧客維持率も118%と高く、成長を続けています。
UiPath社は提供しているRPA製品にAIの技術を掛け合わせることにも注力しています。これまで単純な作業しか任せることができなかったロボットが、乱雑なデータの処理や音声認識、言語の識別などより複雑な作業もこなすことができるようになります。
UiPathの特徴① ユーザーフレンドリーな設計
UiPathはユーザーフレンドリーなインターフェースであるためコードを記述する必要がなく、ドラッグ&ドロップでワークフローを作成できるビジュアルデザインインターフェースを提供しています。これにより、技術的な専門知識がなくても簡単に自動化プロセスを構築できます。
UiPathの特徴② 互換性が高い
UiPathは広範なアプリケーションサポートが可能です。Webアプリケーションやデスクトップアプリケーション、ExcelやERPシステム、CRMシステムなど、多種多様なアプリケーションとの統合が可能です。
UiPathの特徴③ 高い操作性と柔軟性
UiPathは強力な自動化機能を用いています。複雑なビジネスプロセスを自動化するための豊富な機能を提供しています。データ抽出やスクレイピング、フォーム入力やメール操作、ファイル操作など、さまざまなタスクを自動化できます。
UiPathの特徴④ 開発の多様性
UiPathは、再利用可能なコンポーネント、ライブラリ、およびカスタムアクティビティの開発をサポートしています。これにより、自動化プロセスの効率化と拡張が容易になります。
UiPathの特徴⑤ 先進的なAIと機械学習の統合
UiPathはAIおよび機械学習モデルを統合して、より高度な認識能力や意思決定能力を持つ自動化プロセスを実現できます。例えば、ドキュメント理解や画像認識、自然言語処理などが可能です。
UiPathの特徴⑥ コミュニティの手段が豊富
UiPathは活発なユーザーコミュニティと豊富なリソースを持っています。公式のフォーラムやチュートリアルにくわえて、トレーニングプログラムやマーケットプレイスなどが利用可能です。ユーザーは他の開発者と情報を共有し、サポートを受けることができます。
UiPathの特徴⑦ 高度なセキュリティー対策を実装
UiPathはセキュリティーとコンプライアンスが充実しています。データの暗号化やロールベースのアクセス制御、監査ログなど、セキュリティー機能が充実しており、コンプライアンス要件を満たすための支援も行っています。
UiPath主要製品の紹介
UiPath Studio(開発)
UiPath StudioはRPA開発ソフトウェアです。「Studio」「StudioX」の2種類が主なラインナップで、Studioは経験のあるRPA開発者向け、StudioXは現場のビジネスユーザ向けと分けられています。
特にStudioXはプログラミングの知識がなくてもロボットの開発ができるように設計されており、ドラッグランドドロップ方式を採用しているのが特徴です。各ソフトウェアは一般的に利用されるソフトウェアとも連携がとれるようあらかじめシナリオやテンプレートが容易されているほか、Microsoft Officeについてはネイティブ連携されており、より細やかな操作も手軽に自動化することが可能です。
UiPath Robots(実行)
UiPath Robotsは、開発された自動化プロセスを実行するロボットです。UiPathでは、主に2種類のロボットが用意されており、それぞれ「Attendロボット」「Unattendedロボット」と呼ばれます。Attendロボットは人間の指示に従って動くロボットで、Unattendedロボットはバックグラウンドで自動的に動作し、必要なときのみ人間が介在するロボットです。どちらのロボットの特性も併せ持っている、ハイブリッド型で稼働させることも可能です。環境に応じて必要なロボットを選ぶことで最大限のパフォーマンスを引き出すことができます。
UiPath Orchestrator(管理機能)
ロボットを開発して動作させるだけではなく、管理することも重要な要素です。UiPathでは「Orchestrator」と呼ばれる管理ツールが用意されており、オンプレミスまたはクラウドで扱うことができます。同社の表現でも、「自動化の運用管理の心臓部分に当たる」と述べており、管理を重要視していることが伺えます。
Orchestratorを利用することで、単純なロボットの管理だけでなく、監査証跡も取得することができます。ロボットが何をどのように処理したのか、人間がロボットをどのように扱ったのかが記録されることから、トラブルシュートにも役立つ情報になるでしょう。Orchestratorはデスクトップアプリ・Webアプリだけでなく、iPhoneやAndroidでも扱えるようにモバイルアプリも用意されています。
UiPathでのオートメーション手順
UiPathを導入するとなった際、一連の流れを紹介していきます。UiPathを使って業務を自動化するまでの流れは、「自動化したい業務を整理する」「Studioを使ってロボットを開発する」「ロボットを動かす」の3ステップで進めます。
自動化したい業務を整理する
まずはどの業務を自動化するのかを決める必要があります。現在自社で抱えている業務をタスク別に分けて、ロボットが得意な仕事を選定しましょう。タスクを棚卸しすることで、ロボットの開発だけでなく、効率良いビジネスオペレーションを見直すことにも役立ちます。前述の通り、ロボットに任せる仕事は、単純な繰り返し作業を選ぶことですぐに効果を実感することができます。
ロボットを開発する
自動化する業務が決まったら、Studioを使ってロボットを開発します。RPAを使うのが初めての場合はStudioXを利用して、ドラッグランドドロップ方式で開発するのが良いでしょう。ある程度開発経験があり、全社的な業務を自動化するために柔軟性の高いロボットを開発する必要がある場合にはStudioやStudio Proを利用します。StudioXは、プログラムコードを書く必要がなく、自動化のアイデアを形にしやすい設計になっているため、手軽に試してみる際にはおすすめです。
ロボットを設計する際には、ロボットがどのような順番・条件処理を実行するのかを定義するために、ワークフローを作成します。
UiPathでは、3種類の方法でワークフローを作成することができます。上から下に向かって順番に状態が遷移していく「シーケンス」、シーケンスに似ていますが、各アクションを作ったあとにそれぞれを接続していく「フローチャート」、あらかじめ状態を定義して決まった条件に応じて別の状態に遷移する「状態機械」があります。
最初のうちは、一般的にイメージがわきやすい、シーケンスかフローチャートを利用して開発を進めるのがよいでしょう。なお、UiPathには「ワークフローアナライザー」が用意されており、実行する前に不整合がないかチェックすることも可能です。
ロボットを実行する
ロボットを開発できたら、実際に動かしてみます。ビジネスで利用している本番環境に影響がない状態でテストを実施し、うまくいくことを確認した上で実装します。動かし始めてから1周間や1ヶ月の間は、ロボットがうまく動き続けているか注意深く見守ることをおすすめします。最初は動いていても、時間の経過や特定の条件で動かない、などバグが見つかることが多いためです。必要に応じて修正しながら、より安定して動作するロボットを作り上げていくイメージです。
UiPathサポート
公式ドキュメントの充実
UiPathの公式ドキュメントサイトには、製品の使用方法やAPIリファレンス、チュートリアル、ガイドなど、豊富な情報が掲載されています。初心者から上級者まで幅広いユーザーが利用できます。
UiPathアカデミー
無料のオンライン学習プラットフォームで、さまざまなコースやトレーニングプログラムが提供されています。基礎から応用まで、多くのトピックがカバーされており、ユーザーは自己ペースで学習できます。
また、よくある質問(FAQ)やトラブルシューティングガイド、ベストプラクティス集などを収録したナレッジベースが利用可能です。問題解決のための情報が整理されています。
コミュニティフォーラム
UiPathコミュニティフォーラムでは、世界中のユーザーが質問を投稿し、知識を共有し合う場です。UiPathのエキスパートや他のユーザーからの回答を得ることができます。
テクニカルサポート
有償サポート契約を結んでいる顧客向けに、専用のテクニカルサポートが提供されます。サポートチームは、製品のトラブルシューティング、バグの解決、技術的な質問への対応を行います。大規模な導入を行う企業向けには、専任のカスタマーサクセスマネージャーがサポートを提供します。
ライセンスの種類
UiPathのライセンスには以下の2種類が存在します。
- 無償ライセンス:UiPath Community Edition
- 有償ライセンス:UiPath Enterprise RPA Platform
無償ライセンスでは、個人のユーザーやエンタープライズでの利用を目的としている無料のライセンスです。
利用できる機能に制限はありますが、UiPathアカデミーが利用できます。UiPathアカデミーでは、UiPath社が提供しているRPAツールに関する活用方法が学べるオンラインサービスです。RPAに不慣れな方でも、UiPathアカデミーで学習することで使いこなせるようになるでしょう。
有償ライセンスを使用する前に60日間無料で使用できますが、その間はお問い合わせフォームからのサポートは受けられません。
UiPathを導入した事例
最後に、簡単に作成できる自動化のサンプルとして、メールに関わる自動化の例を紹介します。UiPathでは、Microsoft 365およびGmailの自動化に対応しています。UiPathを使えば、「メールに添付されたファイルを特定のフォルダに自動保存」、「Excelファイルに羅列された宛先に向けたメールをテンプレートから作成し、下書きフォルダに保存」「特定の文字列が含まれたメールに、テンプレートから自動で返信」などの処理を行うことができます。
どの処理も、UiPath StudioXでは想定されたものとして設計されているので、個人によって異なるパラメータを埋めるだけで簡単に実装することができます。また、添付ファイルの保存については、ただそのまま保存するだけではなく、日付でディレクトリをつくたり、誰から送られてきたのかをファイル名に加えたりなど人間が行うと細かくて面倒な処理も加えることができます。UiPathのドキュメンテーションでは、これ以外にもいくつも実例が紹介されています。興味がある方は参考にしてみてください。
参考:StudioX – メールの操作の自動化 (uipath.com)
参考:AI-Powered Business Automation Platform – RPAと自動化のリーディングカンパニー | UiPath初めてのRPAツールはUiPathから
昨今のAIやハイパーオートメーション領域の発展などにより、業界問わずDX推進に向けた取り組みが活発になっている中、DXを具現化するためのニーズが高まっています。今や、企業の生産性を高めるために必須と言われているRPAツールには、今回紹介した「UiPath」を始めとして、さまざまなツールが提供されています。
そのため、自社にとってどのツールが最適なのかを判断することが難しく、「RPAツールに興味はあるけど導入が進まない…」というケースも多いのではないでしょうか。UiPathはIT知識がない方でも手にしやすい商品となっているため、今後のビジネスをより円滑に成長させていくためのツールとして、この機会に導入を検討してみたはいかがでしょうか。