Microsoftは「Microsoft Power Platform」というクラウドサービス を展開しています。「Microsoft Power Platform」はアプリ作成やデータの収集・解析などをローコードで実現できる製品です。
多くの機能を使える Power Platformですが、具体的にどのような機能があって何ができるのでしょうか?Microsoft 365(Office 365)をお使いの方必見です!
※2024年11月時点での内容です。
目次
Power Platformとは?
Power Platformはアプリ作成やデータの収集・解析、データ連携などをローコードで実現できる製品で、「ローコード開発ツール」のひとつにあたります。機能は後述しています が、5つのサービスを総称してPower Platformと呼ばれます。
ローコード開発ツールは高度なプログラミングスキルを必要としないため、簡単な業務アプリの開発や、開発後のメンテナンス作業を自社内で完結させることができ、内製化の実現や、ベンダー依存からの脱却を図ることが可能です。また、ソースコードを書く通常の開発作業よりも短時間で開発できるため、コスト削減に貢献できるのも特徴です。
そのような理由から、近年よく耳にするDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応やIT人材不足の解消など、企業を取り巻いている問題に対応できるツールと言えます。
各アプリケーションの機能
Power Platformは「Power Apps」、「Power Automate」、「Power BI」、「Power Virtual Agents」、「Power Pages」の5つのサービスで成り立っています。一つ ずつ、機能の概要を簡単に説明していきます。
Power BI
Power BIでは専門的な知識がなくても簡単にビッグデータの解析を行うことができます。
ExcelやSQLなどのデータを読み込ませることによって、データ分析やデータの可視化をすることができます。もちろんローコードで実現することが可能です。
Power BIは簡単に 分析・可視化が行えるため、素早い意思決定に繋げることができる点が最大のメリットです。グラフの種類もたくさんあり、見たい形でデータを可視化することができます。
Power BIにもデスクトップ版があり、無料で使用することができます。ただ、デスクトップ版では組織内で共有することはできません。 社内で共有したい場合は有償版のライセンスが必要になります。
Power Apps
Power Appsではローコードで業務アプリの開発ができます。業務のニーズに合わせた実用的なアプリで、今までの作業工程を崩さないようなアプリを作成できる点がメリットとなっています。
Power Appsで作成できるアプリは複数のタイプがあり、それぞれ用途によって使い分けることが可能です。
Power Automate
Power Automateではアプリとの連携とタスクの自動化を行うことができます。タスクの自動化では、定型業務や手順の決まった作業をフローにすることで自動化を実現します。
例えば、特定の人からメールが送信された時にチャットツールに通知させたり、メールの添付ファイルをGoogle Driveに自動保存させたりなど、指定した条件でタスクを自動化します。フローの作成イメージは以下の画像の通りです。
「トリガー」と呼ばれるフロー開始のきっかけをもとに、作成したフロー通りに作業が自動で進んでいく仕組みになっています。
また、Power Automateでは1,000を超える外部サービスやアプリと連携することが可能です。Microsoft製品やそれ以外のサービス・アプリに接続するための「コネクタ」と呼ばれる機能が用意されており、簡単に連携することができます。
Power Virtual Agents
Power Virtual Agentsは手軽にチャットボットを作成できるサービスです。キーワードとその回答を設定しておくと、入力された内容から関連性のある回答を導き出して自動で返信してくれるような機能を作成することが可能です。
社外向けの問い合わせ用に作成したり、社内であれば、よくある質問とその回答をチャットボットにまとめておくと手間の削減に繋がりそうですね。
※Power Virtual Agentsは、現在「Microsoft Copilot Studio」の一部として提供されています。
Power Pages
2022年に公開されたPower Pagesは、外部向けのビジネスWebサイトを作成できるPower Platformの最も新しいサービスです。
新サービスとは言っても、先ほど紹介したPower Appsから「ポータル」が進化したサービスですが、よりデザイン性が優れたWebサイトを簡単に構築できるようになりました。
デフォルトのテンプレートを使用すれば、コードを書くことなくかなり早いスピードでサイトを作成することができます。
最近では、上記 5つのサービスに対してAI 機能が搭載されました。自然言語の入力に基づいて、Power Appsではアプリ、Power Automateではフローといったように、AIが設計してくれるようになったのです。
以前よりもさらに簡単に開発できるようになったため、どのようなアプリ・フローを作成したいのかを言語化する能力が必要にはなりますが、大幅な開発時間の短縮は実現できるのではないでしょうか?
Power Platformの管理センターとは?
Power Platform管理センターは、Power Platformを効果的に活用するために欠かせないツールです。
具体的な管理センターでできることは以下のものがあります。
• 環境の作成、編集、削除、バックアップと復元、容量の管理
• ユーザーの追加と削除、ロールの割り当て、アクセス許可の管理、パスワードポリシーの設定
• データ接続の設定、エクスポートとインポート、ガバナンスポリシーの設定
• データ損失防止ポリシー設定、監査ログのレビュー、コンプライアンス要件の遵守
• 最新の更新プログラムの表示とインストール、スケジュール設定
• Power Platformの使用状況に関する分析とレポートの表示、カスタムレポートの作成
このツールを使用することで、データやユーザーを制御し、セキュリティ強化を実現できます。
Power Platformが注目されている背景
上記で説明したように、Power Platformは先進的な5つのクラウドサービスで構成されています。利用することで、現代企業が抱えがちなIT課題をダイレクトに解決する糸口をつかめるでしょう。近年は以下の課題が多く挙げられる傾向にあります。
データ分断化による非効率な業務プロセス
データの統合と分析によるビジネス価値は広く認められています。しかし、現代企業の多くがデータを分断的に管理しているため、効率的な業務プロセスを構築できていません。また、データ分断化によりデータ分析も進めづらい 状況です。
Power AppsおよびPower BIを活用することで、組織内のあらゆるデータを迅速かつ正確に統合し、分析を簡素化します。レポート自動作成機能を使うことで 組織に多くのインサイトを与えてくれるでしょう。
ビジネスニーズに見合わないアプリケーション
企業では長らく個別最適化が進み、各業務プロセスの効率化だけに着目したビジネスアプリケーションが採用されていました。これによりプロセス間のアプリケーション同士が連携不足に陥り、統合的なシステム環境構築を阻んでいます。
Power Appsはローコーディングでビジネスアプリケーションを開発し、非エンジニアユーザーが主体となって開発に取り組むことが可能です。Power Apps でローコードで開発できるシステムを構築することで、 現場視点でビジネスニーズを捉えたアプリケーションを素早く開発できます。
ITリテラシーの違いによってうまれるスキルの格差
近年、多くの企業 DXの導入が急速に進んでいます。しかし、ITリテラシーの格差によってスキルの溝が生まれる傾向があります。ITリテラシーとは、ネットワークやセキュリティなどを理解し、操作する能力です。ITリテラシーが欠如していると、業務効率化につながらないだけでなく、コンプライアンスやセキュリティにおいて大きな問題となる可能性があります。
そのため、各企業は社員のITリテラシーを高める対策が必要です。ITリテラシー格差が生まれ、大きなトラブルにつながることを防ぐ必要があります。
Microsoft Power Platformに含まれている全てのアプリケーションは、ローコードで開発ができます。そのため、プログラミングの知識がない人でもアプリの開発がしやすい点が特徴です。
さらに、直観的に操作できることからシステム開発の経験がない方 でも使いやすく、ITリテラシーの格差が生まれにくいサービスであるといえるでしょう。
ペーパーレス化 が進展しない
業務プロセスごとに紙ドキュメントを発行するのは、業務効率が低下する原因です。しかし、多くの企業では紙文化を捨てきれないことからプロセスが膨大になり、非効率化を進めてしまっています。
Power Platformを総合的に利用すると 紙出力の必要性を大幅に低減し、ペーパーレス化を実現可能です。それによる高い生産性を手にするだけでなく、紙の印刷コストの削減にもつながります。
複雑な業務プロセスで頻発するエラー
ビジネスアプリケーションが分断化されている環境では、業務プロセスが非常に複雑になりエラーが度々発生します。エラーが頻発すれば、業務プロセスは当然非効率になることにくわえて、 ビジネスの推進に多くの悪影響を与えます。
Power Automateでサポートされているコネクタを組み合わせて自動ワークフローを作成し、さらにカスタムコネクタによってERP(Enterprise Resource Planning:エンタープライズ・リソース・プランニング)などと連携して、業務プロセスの自動化が可能になります。これにより業務プロセスの複雑性を解消し、エラーを減少させます。
情報システム部門と事業部門の連携不足
情報システム部門のサービス提供と、事業部門によるフィードバック素早く行うのが望ましいです 。両者が密に連携することによりビジネスニーズに即したアプリケーション構築ができます。
Power Appsを導入すると 情報システム部門と事業部門の連携を行いやすくなります。サービス提供とフィードバックを迅速化することで、よりビジネスニーズを満たしたアプリケーションが開発可能です。
シャドーITの蔓延
情報システム部門が意図していないビジネスアプリケーションの勝手な利用をシャドーITと呼び、現代企業の深刻なセキュリティ問題になっています。原因は、事業部門のビジネスニーズを満たせていないことです。シャドーITが蔓延することにより、セキュリティリスクは増大し、情報流出などの重大事件が発生する可能性があります。
Power Platformはサービス全体を情報システム部門が中央から管理でき、シャドーITの蔓延を防いでセキュリティリスクを低減します。また、ビジネスニーズを満たしたアプリケーション開発を提供することで、シャドーITの発生リスクも抑制します。
データ活用による先手を打てない経営判断
近代ビジネスではデータ活用を主体として経営判断が重要です。しかし、データと業務プロセスが分断化している企業では、経営者に必要なデータを必要なときに提供できずに、迅速な経営判断が困難となっています。
Power Platformの各アプリが連携することであらゆるデータを統合・分析し、スピーディな経営判断に欠かせない材料を経営者に提供します。
Power Platformを使うメリットとは?
他Microsoft製品との親和性
たとえば、Dynamics 365を既に利用している場合は、Power PlatformでDynamics 365のデータをそのまま使用でき、新しくアプリを作成したい時などに便利です。新しくデータベースを用意する必要がなく、手間やコストを省くことができます。また、Dynamics 365の機能を拡張させるためにPower Platformを使うといった活用もできます。
他のMicrosoft製品とも簡単に連携できるコネクタが用意されているため、他のツールでは手間がかかる連携も、Power Platformでは簡単に行えることがあります。このように他のローコード開発ツールとは違いMicrosoft製品と親和性があるため、Microsoft製品を活用している方は特に便利にお使いいただけます。
費用が抑えられる
基本的にローコード開発であるため、ソースコードを書いて構築するよりも専門性も必要なく、簡単に短期間で作成することができます。社内で内製化することができれば、ベンダーとの打ち合わせ時間や定例会などの時間を短縮することができるため、開発コストが抑えられるでしょう。
また、Power Platform自体に5つのサービスが備わっているため、複数のシステムを導入する必要がないこともメリットです。複数のシステムを導入することで起きる 運用コストの増大も防ぐことができます。
費用を抑えつつDX化を進められるのは、 Power Platformの大きなメリットと言えます。
業務全体での最適化を実現
特定の業務にのみシステム導入を行うと、システムが導入された業務 は最適化されますが、その他の業務は最適化されません。データの連携が上手くいかなかったり、複数のツールを導入しすぎて管理がうまくできない状態になっていたりと様々な要因がありますが、Power Platformではこのような個別最適化ではなく業務全体を最適化します。
アプリの作成やデータ連携、データ分析までPower Platformで完結できることはもちろん、ExcelやWord、Azureなどを用い、お客様の現在の業務それぞれに合った最適化を実現することが可能です。
Power Apps、Power Automateなどサービス単体での使用も効果的ですが、他のサービスやMicrosoft製品と組み合わせることでさらに効果を発揮することができます。
内製化を実現できる
Power Platformを導入して、Microsoft 365をはじめとした製品と組み合わせることにより内製化の実現が可能です。組み合わせて使うことで、それぞれのコミュニケーション機能の強化やアプリの作成などさまざまな業務において業務改善活動ができます。
Power Platformはローコードもしくはノーコード開発が可能なため、アプリ開発を外部に委託せず自社で完結できます。外部への依頼が不要となることで、開発期間が短縮できるため、スピーディーな導入が可能です。
高度なセキュリティで守られたサーバー環境
Power Platformは高度なセキュリティを有したサービスです。Microsoftが定期的なウイルスチェックを行います。
Microsoftはセキュリティに大規模な投資をし、常に積極的にセキュリティ対策を行っています。多くの国家機関や医療機関、金融機関などがMicrosoft製品を導入していることからもセキュリティの高さがうかがえるでしょう。Power Platformはクラウドサービスであるため、保守作業が不要になることから人材不足やコスト削減への対策にもなります。
Microsoft 365の利便性の向上
Power Platformはさまざまなツールと連携が可能です。例えばPower platformの1つであるPower AppsはExcelと連携することで、よりスムーズな帳簿を作成できます。Excelの連携したツールとして活用するだけでなく、Excelのデータを読み込んで出力するためのツールとしても利用可能です。
Power Platformで実現が難しいこと
Power Platformは、ローコードで業務アプリ開発、データ分析、ワークフロー自動化などに非常に便利なツールですが、できないこともあります。Power Platformを導入する際は、以下の2点を認識しておきましょう。
Power Appsで作成したアプリの一般公開はできない
Power Appsで作成したアプリは、社内利用に限定されており、一般公開はできません。Power Appsは、Power Platform環境内のデータにのみアクセスできますが、アプリを一般公開する場合は、外部とのアクセスが必須のため一般公開ができない仕様となっています。アプリを一般公開すると、悪意のあるユーザーが悪用する可能性もあり、セキュリティリスクが高くなることも制限をかけている理由のひとつです。
Power Appsのアプリを外部のユーザーに共有する場合は、ゲストユーザーとしてアカウントを追加することを検討しましょう。
複雑な機能を実装することは難しい
Power Platformは、シンプルなアプリの作成に適しています。 複雑な機能や高度なロジックを必要とするアプリ開発には難しいことが多いです 。
Power AppsとPower Automateを組み合わせることで、複雑な機能の実装も可能ですが、Power Platform自体が軽量なプラットフォームのため、処理速度が低下する可能性が高いです。複雑なアプリ開発には、従来の多くのコードを記述する開発方法を用いる必要があります。
ライセンスについて
Power Platformというライセンスはありませんので、使いたい機能を確認した上で購入する必要があります。一部のアプリケーションでは期間が限定されるものの無償版も用意されています。
• Power Apps Premium:1ユーザーあたり月額2,998円
• Power Automate Premium:1ユーザーあたり月額2,248円
• Power BI Pro:1ユーザーあたり月額1,499円
• Power BI Premium:1ユーザーあたり月額2,998円
• Power Virtual Agents(Microsoft Copilot Studio):月額29,985円 (25,000 メッセージ/月)
• Power Pages:認証済みユーザー、〜100ユーザーまで29,985円
※最新のライセンス情報に関してはMicrosoft社公式Webサイトでご確認いただくようお願いします。
Power Platform導入におすすめ組織
Microsoft Teamsをすでに業務で利用している場合、Power Platformの活用をおすすめします。Microsoft 365で利用しているアプリケーションが多ければ多いほど、Power Platformの恩恵を感じやすいでしょう。
まずは、Power Automateで定常的に投稿するメッセージを自動化したり、リマインドメールの送付を自動化したりなど、少しずつ身近な業務の効率化で活用してみてはいかがでしょうか。
また、アプリケーション作成が簡単かつスピーディーに実装できるPower Appsの活用もおすすめします。ノーコード開発ではなくローコード開発のため、ある程度のツールを使いこなすスキル は必要ですが、手軽にアプリケーションを導入したいというシーンで活用できることでしょう。
Power Platformの活用事例
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車は全社的にDXを推進しています。その一環として、工場での「Microsoft Power Platform」を用いた現場主体の「市民開発」によるアプリ開発が進行中です。
アプリ開発を実行したことで 、システム開発の内製化が実現し、リードタイムの短縮や業務効率化、デジタル領域での改善効果が得られています。共通システムの迅速な展開や、品質管理にAIを利用するなど、先端技術の活用にも積極的です。また、安価なボードコンピュータを用いた自前の装置開発も進めています。
「Microsoft Ignite」イベントでPower Platformを知り、その簡便さに驚き、業務担当者が自らアプリ開発を行うことで外部委託の必要がなくなり、効率化が進むことを確信したそうです。実際に業務効率が300%以上向上するなど、具体的な効果も確認されています。
参考:トヨタ自動車株式会社 事例
東京地下鉄株式会社
東京地下鉄株式会社は、Microsoft Power Appsを活用して、線路保守業務の効率化と社員の負担軽減を実現しています。都内に9つの路線があり、約200kmにも及ぶ全路線の目視での点検に膨大な時間と労力を要していました。
そこで、Azure Cognitive ServicesとPower Appsを組み合わせ、線路画像から設備劣化などの異常を自動検出するソリューションを開発しました。Power Appsで作成したアプリは、Custom Visionで構築した検出モデルと分類モデルを呼び出し、締結装置の正常/異常を自動判定します。
このソリューション導入により、点検にかかる時間を大幅に削減し、社員の負担を軽減できました。また、AIによる高精度な異常検知により、予兆保全が可能となり、安全性の更なる向上にも貢献しています。
Power Platformで業務プロセスの改善やDX推進を
Microsoftが提供しているPower platformは、情報の共有や業務プロセスの改善につながるツールの作成が可能です。ノーコードであることからプログラミングの知識が不要で、IT人材不足の解決にもつながります。クラウドサービスであることから、業務効率化やコスト削減、充実したセキュリティ環境に置くことも可能といえるでしょう。
株式会社ITSOではMicrosoft製品に精通した経験豊富なエンジニアが在籍しています。DX化を推進するための内容整理方法や、着手方法にお困りの企業様には、 上流工程からご案内いたします。