
近年、画像文字読み取り技術(OCR: Optical Character Recognition)は飛躍的な進化を遂げており、 この進歩は、AIや機械学習の発展と密接に関連しています。従来のOCR技術は、明確で整ったフォントの印刷物に対して高い精度を誇りましたが、手書き文字や複雑なレイアウトに対応するには限界がありました。
しかし、現在のOCR技術は、ディープラーニングを活用することで、手書き文字や 多言語文書、写真に埋め込まれた文字など、これまで読み取りが 困難だった書類も読み取れるように なっています。
日本国内では、行政機関や企業が紙文書のデジタル化を進めており、OCR技術を活用することで業務効率化が図られています。また、スマートフォンのアプリにもOCR機能が搭載され、個人ユーザーが簡単に利用できるようになっています。
画像文字読み取りとは?
画像文字読み取りとは、写真やスキャンした文書に含まれる文字を検出し、デジタルデータとして保存する技術です。この技術を活用すると 、手動での文字入力を不要にし、効率的に紙ベースの情報をデジタル化することができます。
OCRは、銀行の書類処理や医療記録のデジタル化、物流におけるバーコードスキャンなど、様々な分野で活用されています。最近では、ディープラーニングの技術が加わり、手書き文字や読み取りが難しい 曖昧なフォントでも高精度な認識が可能になっています。
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画像文字読み取りをするためにはどんな方法がある?
画像文字読み取りを実現するための主な方法は4つあります。
従来型OCR
デジタル画像内のピクセルパターンを解析し、既存のフォントデータと照合するシンプルな仕組みです。この方法はスピードが速い一方、複雑な文字や手書き文字には対応が困難です。特定のフォントやルールに基づいて文字を認識し、過去の技術に基づいており、シンプルなレイアウトに適しています。
AIベースOCR
画像を解析して特徴を抽出し、機械学習モデルで文字を特定します。手書きや異なる言語の文書にも対応でき、多用途性が特徴です。ディープラーニングを活用し、複雑なレイアウトや手書き文字、多言語対応が可能です。
ハイブリッドモデル
ハイブリッドモデルのAIは、一般的なレイアウトやフォーマット部分は従来型OCRが処理し、より複雑な領域にはAIが対応します 。これにより速度と精度の両方が向上します。従来型OCRとAI技術を組み合わせ、高速かつ精度の高い認識を実現できます。
モバイルOCR
スマートフォンで直接画像を撮影し、その場で文字を解析します。特に外出先での名刺管理や翻訳アプリに役立ちます。スマートフォンやタブレットでカメラを使い、リアルタイムで文字を解析します。
画像文字読み取り方法のメリット
従来型OCRのメリット
1.高速処理が可能
従来型OCRは、規則的で標準化されたフォントや文字パターンに特化した設計のため、高速に文字認識処理を行えます。これにより、特に単一フォーマットが統一されている 大量の書類(例:銀行の振込用紙や税関連の申告用紙)の処理に有効です。時間の節約が可能となり、人為的なエラーのリスクも減少します。
2.単純な文書に適している
従来型OCRは、シンプルなレイアウトや明確な活字体が使用されている場合、非常に高い精度で文字を認識できます。このため、業界による定型文書(例えばバーコードや請求書)の処理では大きな成果を発揮します。
3.コストが低い
比較的古い技術である従来型OCRは、開発コストや運用コストが低いため、予算が限られている小規模プロジェクトや非営利団体にも採用しやすいのが特徴です。また、既に成熟した技術のため、運用時の問題やバグが少なく信頼性が高いのも利点です。
AIベースOCRのメリット
1.非定型フォーマットに対応
従来型OCRが苦手とする、文字配置が不規則な文書や複雑なレイアウトも、AIを活用したOCRならば対応可能です。ディープラーニング技術により、文書内の文字だけでなく、文脈や周辺情報も解析し、最適な認識結果を提供します。例えば、手書き文字や非定型フォーマットの契約書でも正確に処理できます。
2.精度が高く、多言語対応も可能
AIベースOCRでは、多言語の文字セットを扱う際にも精度を維持できます。例えば、欧文、漢字、ひらがな、カタカナが混在する日本語文書やアラビア文字と英文字が同時に記載された文書でも適切に処理可能です。この能力は、国際的な企業や多文化環境に特に有効です。
3.手書き文字の認識に強い
手書き文字は個人差が大きく、従来のOCRでは対応が難しかった分野ですが、AIベースOCRは膨大なトレーニングデータを基に学習することで高精度の認識が可能となっています。例えば、医師が記載する処方箋や学生が手書きで記した試験答案のデジタル化などに活用されています。
ハイブリッドモデルのメリット
1.速度と精度のバランスがとれる
ハイブリッドモデルは、基本的な処理に従来型OCRを使用し、複雑なケースのみAIが補完するため、全体の処理速度を犠牲にせず高精度の認識が可能です。この仕組みは、処理対象が混在している場合(例:印刷文書と手書き文書が混在する場合)で特に有効です。
2.柔軟に異なるタスクに対応
ハイブリッドモデルは、用途に応じてカスタマイズが可能で、様々なタスクに対応できます。例えば、大量の郵便物を迅速に分類する際、印刷部分の処理を従来型OCRに任せ、住所や名前の手書き部分をAIに対応させるといった使い分けができます。
モバイルOCRのメリット
1.どこでも使用可能
スマートフォンやタブレットのカメラを利用して文字を読み取るモバイルOCRは、外出先でも手軽に利用できます。特に、フィールドワーク中のデータ収集や旅行中の翻訳アプリにおいて便利です。また、専用機器を必要としないため、ハードウェアへの依存度が低い点も魅力です。
2.手軽で即座に結果を得られる
モバイルOCRは、撮影した画像をその場で即座に解析し結果を表示します。これにより、名刺管理や領収書の記録、文字起こし作業が効率化されます。また、ユーザーインターフェイスが直感的であるため、特別なトレーニングが不要です。
画像文字読み取りが活用されている業界と事例
医療業界―診療記録や処方せんをデジタル化
多くの病院では、手書きの診療記録や処方箋が依然として使用されており、データの電子化に時間がかかる場合があります。AI-OCRの活用により診療記録や処方せんをスキャンし、患者の名前、診療内容、処方薬情報を自動的に認識してデータベースに登録します。国内の大手病院では、AI-OCRの導入により手書きの処方せんのデータ入力にかかる時間が1日あたり3時間短縮されたケースがあります。また、データ入力ミスが80%削減されました。
行政―申請書類のデジタル化
手書きで提出される住民票や各種申請書類は処理に時間がかかり、役所窓口の負担となることが課題でした。AI-OCRの活用により書類をスキャンして内容を読み取り、データベースに自動登録。特に手書きの文字の精度向上が鍵となります。神奈川県の取り組みでは、年間約10万件の申請処理時間を大幅に短縮し、従来比で1件あたりの処理時間が平均30%削減されました。
金融業界―口座開設や融資申請の書類処理
銀行では膨大な紙の申請書類を扱う必要があり、確認作業に時間がかかることが課題でした。AI-OCRの活用により口座開設申請書や融資書類をデジタル化し、重要な情報(氏名、住所、申請金額など)を自動抽出。さらにリスク評価システムと統合されるケースもあります。国内大手銀行では、AI-OCRの導入により書類処理時間が50%削減され、月間処理能力が倍増しました。
物流業界―配送伝票と倉庫管理
手動で配送伝票を管理する従来の方法では、誤配送や確認漏れが発生する可能性がありました。AI-OCRの活用により配送伝票をスキャンし、送り先住所や商品情報を正確に認識。さらに、倉庫管理システムと連携して在庫管理を最適化。某宅配業者では、AI-OCRの導入によりヒューマンエラーが95%削減され、配送効率が20%向上しました。
小売業界―AI-OCR搭載レジ
パンや総菜など、バーコードがない商品の識別が難しい場面が課題でした。AI-OCRの活用によりレジシステムにAI-OCRを組み込み、商品の種類を画像認識と文字認識で識別し、自動的に価格を反映。大手ベーカリーチェーンでは、従来型レジシステムよりも1顧客あたりの会計時間を平均40%短縮することに成功しました。
AI-OCRの今後の展望
画像文字読み取り技術(AI-OCR)は、手書きや印刷物から文字をデジタルデータに変換する技術であり、医療分野での診療記録のデジタル化、行政機関での申請書類の効率化、金融業界における口座開設や融資書類の処理の迅速化、物流業界での配送伝票管理の精度向上、小売業でのセルフレジシステムの最適化など幅広い分野で活用されており、今後はAI技術との融合、多言語対応の進化、モバイル対応拡大、セキュリティの強化、さらに環境負荷軽減への寄与といった展望が期待されています。
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