
目次
はじめに
こんにちは、株式会社ITSOメディア・ストラテジーチームです。
近年、企業にとってDX推進が重要課題となっている一方で、実態としては多くの企業が期待した成果を得られていないのが現状です。
IPA(情報処理推進機構)が公開している『DX動向2024』によると、取組み項目別の成果状況で「すでに十分な成果を出している」と回答している日本企業はいずれの項目でも5〜15%程度に留まり、米国の30%前後から大きくかけ離れています。
ではなぜ、多くの企業のDX施策は思うような成果を上げられないのでしょうか。
本稿では、DX推進が失敗する主な5つの理由と、それらを克服するためのアプローチについて解説します。
理由1. ビジネスプロセスの理解不足
DXが失敗する最大の理由の一つは、自社のビジネスプロセスを深く理解できていないことです。
現場の業務をよく観察すると、「なぜこの作業をしているのか」、「この手順は本当に必要なのか」という疑問が浮かぶことがよくあります。多くの場合、それらは「昔からそうしているから」、「前任者がそうしていたから」という理由で続けられています。こうした作業の目的や価値を問い直さないまま、ただただデジタル化しても、非効率なプロセスがそのまま残ってしまいます。
こういったビジネスプロセスの理解不足は、計画の甘さにつながります。導入しようとしている製品が自社の業務に適合するか判断できず、想定以上に業務プロセスが複雑だったことが後から発覚し、度重なる仕様変更が発生します。結果的に、スケジュールは延び、コストは膨らみ、品質は下がり、誰にも使われない化け物システムが生まれてしまうのです。
ビジネスプロセスの理解不足 に対するアプローチ:業務可視化と部門横断の取り組み
業務プロセスの可視化から始めましょう。闇雲に手を付けるのではなく、現状を客観的に把握するためのツールを活用することが重要です。例えば、BPMNは業務の流れを標準化された図記号で視覚的に表現する国際標準の記法で、複雑な業務プロセスも理解しやすい形で図式化できます。また、プロセスマイニングは業務システムのログデータを分析して実際の業務フローを自動的に可視化・分析する技術です。これらのツールを使って顧客視点と従業員視点からプロセスを見直すことで、真の課題が見えてきます。
重要なのは、DXは単なるIT化ではなく、業務改革(BPR)と一体で進めるべきだということです。技術導入だけでなく、プロセス全体を見直し最適化することが成功への鍵となります。
理由2. スキル・人材不足
DX推進には様々な専門知識やスキルが必要ですが、多くの企業ではそうした人材が不足しています。
「IT人材がいない」という悩みはよく聞かれますが、現状の業務で手一杯の企業では、IT人材を自社で確保する余裕さえないことが現実です。そのためなんとなく詳しそうな若い社員に「DXをやっておいて」と丸投げするケースも少なくありません。しかし、それでは本質的な変革は起こりません。
また、経営層や管理職層のIT知識不足も大きな障壁です。DXの推進には意思決定者のデジタルリテラシーが欠かせませんが、その認識が低いと、的外れな判断や期待過剰な要求につながります。特に最近では生成AIへの過度な期待が目立ちます。生成AIは確かに強力なツールですが、何でも魔法のように作れるわけではなく、適切な指示と活用方法を理解しなければ十分な成果は得られません。
さらに、IT知識はあってもビジネスの知識が不足しているケースも問題です。技術だけを追求し、それが実際のビジネスにどう貢献するのかという視点が欠けると、かえって業務を複雑にしてしまいます。
たとえば書類の過剰なパス回しの過程そのものを見直さずに送信・承認処理を自動化してしまったり、確認行為を後から継ぎ足して複雑になりすぎた業務プロセスをそのままRPAに組み込んでしまったりといった、いわゆる自動化のための自動化が典型例です。
一見効率化されたように見えますが、このような自動化を繰り返していると全体最適の観点では非効率なシステムが作られることがあります。
スキル・人材不足 に対するアプローチ:計画的な人材育成と外部リソースの活用
全社員のデジタルリテラシー向上を基本としつつ、DX推進のための専門人材育成も並行して進めます。ただインプットさせるだけでなく、自走して学習と業務改善のサイクルを回せるような環境づくりも並行して進めていくことが重要です。
開発・教育で外部リソースを活用する際は、単なる丸投げではなく、内製化を支援するパートナーシップとして活用しましょう。
理由3. ITの導入をゴールにしている
多くの企業がDXに取り組む際に犯してしまう大きな誤りの1つとして、ITツールの導入自体をゴールと考えてしまうことが上げられます。
「うちもAI導入しなきゃ」、「RPAを入れないと遅れをとる」といった焦りから、ツールの導入そのものが目的化してしまうケースが少なくありません。しかし、ツールを導入しただけで終わり、というケースでは本質的な変革は起きません。
そもそも企業がDXに取り組む本来の目的は何でしょうか。それは顧客価値の向上、競争力の強化、新たなビジネスモデルの創出など、ビジネス成果につながるものであるはずです。しかし、IT導入を目的化してしまうと、こうした本質的な目標を見失ってしまいます。
ITの導入をゴールにしている に対するアプローチ:明確な価値創出とKPI設定
DX施策と事業成果を明確に結びつけ、測定可能なKPIを設定します。ツール導入自体を測定するのではなく、たとえば、対応時間30%削減、顧客満足度15%向上など、ビジネス成果に直結する指標を設定しましょう。短期的なクイックウィンと中長期的なゲームチェンジの両面からアプローチすることで、継続的な成果を生み出すことが可能になります。
理由4.社内のコミュニケーション不足
DX推進において、現場と経営層のコミュニケーションギャップも大きな失敗要因です。
経営層はエンゲージメントサーベイなどの数値だけで現場を理解したつもりになり、現場の本当の課題を把握できていないケースが少なくありません。現場の姿を見ずに、数字や外部のコンサルタントとしか対話をしないと、どんなに良いシステムを導入しても社員がついてきてくれない事態に陥ります。
一方で、現場の社員も「経営層がDXを重視している」と感じなければ、積極的に取り組む動機が生まれません。経営層の本気度が伝わらず、「また一過性のブームに乗っかっている」と捉えられてしまうと、変革は表面的なものに留まります。
さらに、部門間の断絶も深刻な問題です。特にIT部門と事業部門の溝が大きいと、IT部門は現場のニーズを正確に把握できず、事業部門はIT部門の技術的制約や可能性を理解していないため、互いに「あの部門は分かっていない」と連携を取りづらい関係となってしまいがちです。
社内のコミュニケーション不足 に対するアプローチ:トップダウンとボトムアップの融合
経営層のコミットメントと現場の参画を両立させます。経営層はメッセージをわかりやすく現場に伝え、かつ現場の声を積極的に受け入れましょう。
もちろん、アンケートやワークショップを形だけで開催するだけでなく、吸い上げた意見がきちんと取り入れられていると実感できるような施策を取ることが大切です。
また、経営層と現場部門の間にIT部門を据え、そのIT部門が横串を通した施策を円滑に行えるように配慮することが求められます。
理由5. 組織文化を変革できない
DX推進において最も難しいのが、組織文化の変革です。多くの企業が「テクノロジーを導入すれば変革できる」と考えがちですが、実際には人々の働き方や価値観を変えることの方がはるかに重要です。
DX動向2024の調査によれば、企業文化や組織マインドの根本的な変革の成果が出ていると回答している企業は26.2%にとどまり、多くの企業がこの段階で行き詰まっています。特に仕事(業務)を個人が選べる仕組みがある、高いスキルを持っていることが報酬に反映されるといった企業文化・風土の要素ができていない企業が多く、旧来のヒエラルキー型組織文化がDX推進の障壁になっています。
また、変化への抵抗も大きな課題です。今までのやり方が変わることへの不安から、社員がDX推進に消極的になるケースは珍しくありません。特に中堅・ベテラン社員の協力が得られないと、経験と知識が豊富な人材の力を活かせないまま、表面的な変化に終わってしまいます。
さらに、失敗を許容する文化がないことも問題です。DXは試行錯誤の連続ですが、「失敗は許されない」という空気が強い組織では、誰も新しいことにチャレンジしなくなります。失敗を責めるのではなく、失敗から学んで迅速に改善していく、むしろ失敗を歓迎していく風土がなければ、真のイノベーションは生まれません。
組織文化を適応させられない に対するアプローチ:心理的安全性の確保と変化のマネジメント
失敗を恐れずチャレンジできる環境づくりが重要です。ベスト・フェイル・アワード(業務改善のために役立った失敗の共有を表彰)のような失敗から学ぶ文化の醸成や、DXによる変化を丁寧に伝えるコミュニケーションが効果的です。特に中堅・ベテラン社員の経験がDXでも重要であることを示し、リスキリングの機会提供や成果に基づく評価制度の導入で、組織文化を変革していきましょう。
まとめ:DX成功のための5つのアプローチ
本稿では、DXが失敗する5つの主要な理由と、それぞれに対する対策について解説しました。DXの成功には、以下のアプローチが欠かせません。
1.ビジネスプロセスを深く理解する
業務プロセスを可視化し、単なるIT化ではなく業務改革(BPR)と一体で推進します。現場の業務フローを徹底的に理解し、顧客価値を生まない工程を見直すことが重要です。
2.人材とスキルを計画的に育成する
全社的なデジタルリテラシー向上を図りながら、専門人材の確保と育成を進めます。外部リソースも内製化を支援するパートナーシップとして戦略的に活用しましょう。
3.明確な目的とKPIを設定する
DX施策と事業成果を明確に結びつけ、ビジネス成果に直結する指標を設定します。短期的なクイックウィンと中長期的なゲームチェンジの両面からアプローチしましょう。
4.社内コミュニケーションを強化する
経営層のコミットメントと現場の参画を両立させます。トップダウンとボトムアップを融合させ、部門間の連携を促進することで、組織全体の推進力を高めます。
5.組織文化の変革に取り組む
失敗を恐れずチャレンジできる心理的安全性を確保し、変化に対する抵抗を減らすコミュニケーションを行います。リスキリングの機会提供や成果に基づく評価制度の導入も効果的です。
DXは一時的なプロジェクトではなく、企業文化や組織の在り方まで変革する継続的な取り組みです。「なぜDXを行うのか」という本質的な問いに立ち返りながら、上記のアプローチを総合的に実践することで、真の変革を実現できるでしょう。
株式会社ITSOなら真のDXを実現できる
ここまで述べてきたDX失敗の理由を踏まえると、成功への道筋は単純なIT導入ではなく、ビジネスプロセスの理解、人材のスキル向上、そして明確な目的設定にあることが分かります。株式会社ITSOは、こうした課題をトータルに解決するパートナーとして、企業のDX推進を支援しています。
ITSOはハイパーオートメーションの新たなビジネス標準を掲げ、単なるIT化に留まらない真のDXを実現するためのアプローチを提供しています。
ハイパーオートメーションを実現する統合的アプローチ
ITSOが提供するハイパーオートメーションは、AI、RPA、LCAP(ローコード開発)などの最先端技術を組み合わせた総合的自動化ソリューションです。業務プロセスの可視化・分析から自動化、継続的改善までを一気通貫で支援し、人手不足という社会課題に対応します。
一気通貫の支援体制
ITSOの強みは、DXの全工程をカバーする支援体制にあります。DXコンサルティングではお客様のビジネスに合わせた最適なDX戦略を策定し、システム開発支援では最新技術を駆使したカスタマイズシステム開発でビジネスプロセスを効率化します。さらに、ソフトウェアサポートによってシステムの継続的な最適化を図り、トレーニングサービスではお客様のチームがテクノロジーを効率的に活用するためのスキルアップを支援します。
この一気通貫のアプローチにより、ITツールの導入だけに終わらない、真の業務変革を実現します。
高度専門人材の集結
ITSOの最大の特徴は、ITコンサルとエンジニアの両面を併せ持つマルチタスク型人材による支援です。単なるコンサル会社ではなく実装までやり抜くコンサル会社であり、同時に単なる開発会社ではなく常に最新技術で最善のソリューションを提供できる開発会社です。
KEEP GOINGの精神で課題に向き合い、解決策を見出す不屈の姿勢と、高い従業員定着率を実現するチーム制と適正な評価・報酬体系が、お客様の長期的なDX成功を支えています。